◆場 所(新宿区西河田町10−10) 地下鉄大江戸線の若松河田駅の河田口(新宿寄りの出口)を出て振り返ると、一番上の写真の建物が見えます。脇の道を進み、右に折れると伯爵邸の入口です。駅の出口から徒歩1分以内です。 地図はこちらです。 ◆最寄り駅 地下鉄大江戸線 若松河田駅 ◆電 話 03−3359−5830(FAX 03−3359−5831) ◆営業時間 11:30〜14:00(ラストオーダー) 18:00〜21:00(ラストオーダー) 年中無休 ◆雰囲気 小笠原伯爵邸は昭和2年に小笠原長幹伯爵の邸宅として、曾禰中條建築事務所(慶応義塾大学の図書館などを設計した、戦前の有名な設計事務所で、現在はありません。)が設計したスパニッシュ様式を取り入れた館で、老朽化と東京都の財政難(米軍接収解除後、法務省から東京都が取得した建物)で長らく放置されていましたが、修復費用は事業者持ちということで民間に10年という期限で貸し出され、一年半に及ぶ修復を終え、レストランとして甦ったものです。 長らく廃墟同然で放置されていた有名な建物を、レストランという営利目的に利用するとはいえ、できる限り往時の美しい姿に甦らせようとした経営者の姿勢には感服せざるをえません。細部の装飾も失われたものは当時の写真を参考に復元し、傷ついた部分は丁寧に修復しています。 小笠原伯爵邸のサイトには往時の写真や修復の経緯が書かれています。またレセプションには建物に関するパンフレットも用意されていました。 レストランに入ると正面にレセプションがあり予約リストをチェックしてくれます。左手に女性用、男性用のレストルームがあり、右手奥にはバー&カフェ(予約は必要ないようです。)があります。レセプションを越えて広い廊下を進むと右手はパティオで、左手には グランドサロン(旧食堂) ラウンジ、 シガールーム(旧男性専用喫煙室で、現在もシガールームとして使われています。最も有名なイスラム様式風な部屋で大理石の床はモザイク状です。 この部屋の外壁には鳥、葡萄唐草、草花等の文様が施されています。) が並んでいます。 広い廊下の突き当たりがメインダイングルーム(伯爵の書斎と居間だった場所で、壁際の飾りだなにはブランデー、リキュールなどいろいろなお酒が用意されていました。)で、その奥が二番目の写真のベランダで、ここもテラス席としてダイニングスペースとして利用されています。メインダイングルームは少人数用のテーブルスペース、ベランダは主にカップル用のテーブルスペースと使い分けられているようです。メインダイニングルームとテラス席は写真のようにダークブラウンの木枠のガラス扉で仕切ることができます。 ダイニングルームのインテリアは豪華という印象ではなく、スパニッシュ様式の装飾もないですが、上質感のある落ち着いた雰囲気にまとめられています。テラス席、メインダイニングルームともに天井は高く、テーブルの間隔も適度な広さで、通路も広く取られています。なおテラス席ですが、窓の外は倉庫(雰囲気をこわさないようにパリの街の建物の写真が貼られていました。)が迫っていて、ライティングされた庭が見渡せるわけではありません。 テラス席の床は小口タイル仕上げ、メインダイニングルームの床は絨毯となっています。椅子はダークブラウンのしっかりした造りで、クッションは少なめですが、座り心地は良いものです。 照明はベランダ側のテラス席はガラスのグローブのペンダント、メインダイニングルームはシャンデリアとダウンライトが使われています。テーブルの上をスポット的に明るくして料理が映えるようにはしておりませんが、全体におだやかな明るさです。BGMは流れていませんでした。 テーブルウェア関係は次の通りです。テーブルクロスは白の二枚掛け、食器はエルブジ(エルブリ)のグランシェフ、フェラン・アドリア氏のためにデザインされた、斬新なデザインのolaシリーズ、グラスはNachtmann、カトラリーはステンレス製のACSAでした。テーブルにはプティフラワー、olaシリーズのキャンドルホルダーも置かれていました。 レストルームはレセプションの隣に男性用、女性用があります。男性用は女性用より狭くなっていますが、十分な広さです。床はダークブラウンで壁は白く仕上げられています。洗面台には液体石鹸、ペーパータオルの用意があり、フラワーアレンジメントも飾られていました。 サービスに関してですが、レセプションを含めて充分なスタッフが配置されていて、ちょっと敷居が高い感じがしましたが、全体に丁寧で高級店に相応しいものでした。入店から席につくまでスムースで、椅子の出入りもきちんとサポートしてくれます。料理が1コースのみなので、料理の相談はないですが、料理について質問すれば丁寧に答えてくれますし、ワインの選択もいろいろアドバイスしてくれます。料理の出される間隔はあまり間をおかないで、次々に運ばれてくるので、もう少し余裕があってもと思いましたが、テーブルへの目配りは充分です。出店時も丁寧で、気持ちよく店をあとにできました。 ◆価 格 ランチ ¥7,350 ディナー ¥9,450 アラカルトはありません。 ◆料 理 料理は小皿(食器は大きい場合が多いですが)構成の1コースのみで、アラカルトもないので、メニューを見ながら料理を選ぶ楽しさはありません。既に席に着くと、縦長のメニューが置かれて(持ち帰り可能です。)いました。近年、エルブジ(エルブリ)に代表されるモダン・スパニッシュ料理がフレンチやイタリアンに影響を与えていますが、小笠原伯爵邸の料理はモダン・スパニッシュ料理そのものです。どのお皿も斬新というわけではないですが、新たな発想で組み立てなおした料理には驚きがあります。しかも単に奇をてらったわけではなく、純粋においしいと思う料理でした。料理は二ヶ月程度の周期で変わるようです。小皿構成のコース料理なので、人によっては量的に物足りなく感じるかもしれませんが、全体を通してみると普通の人には充分な量と思います。 前菜の『イベリコ・ベヨタとパン・コン・トマテ』は、イベリコ豚の生ハムとトマトを組み合せた一口サイズの料理です。生ハムがおいしいのは当然としても、トマトの甘くフルーティな風味は魅力的でした。 前菜の『甘海老とじゃがいものフリット』は、ピンチョスのような料理です。フリットにしては、とても軽く仕上げていて、甘海老はプリ、プリしていました。 前菜の『オマール海老と茄子のアーモンドプディング』は、一番印象に残った料理で、新鮮なオマール海老がプディングの中に隠れています。茄子の風味は抑え目でオマールの風味が、プディングのクリーミーな甘さととけあって強く印象に残ります。レースペーパーではなく、薄いグラスの下にはウレタン(?)ゴムが敷いてありました。 前菜の『自家製アンチョビと野菜のコカ』は、ドライトマト、フレッシュトマト、エディブルフラワー(すみれ)をアンチョビと合せたものです。パイ生地はパンみたいなもので、アンチョビというと塩辛いイメージですが、甘く仕上げていたのが印象的です。 スープの『ポロ葱とタイムのクリームスープ』は、オーソドックスにポロ葱の甘さを引き出したクリームスープでタイムの風味は控えめでした。もう少し量が欲しいところです。 魚料理の『塩鱈のコンフィ ビネグレットソース』は、塩鱈のコンフィといっても塩辛いわけではなく、酸味の少ないビネグレットソースで淡白に仕上げています。ソースには鱈のゼラチン質が使われているようです。 魚料理の『黒むつのグリーンソース』は、黒むつをポワレして、たっぷりのグリーンピースを使ったソースで仕上げていました。浅蜊も添えられ、ソースにも浅蜊の風味が生きています。 肉料理の『仔牛のエンパナーダ 青唐辛子とオリーブ』は、仔牛をミンチ状にし、レアで火入れしていました。オニオンの甘みを生かした青唐辛子(といっても辛くはない。)のソースを使い、パイ生地(?)をカリッと揚げた(?)ものを仔牛の上にのせています。 お米料理の『きのこのスープパエリア』は、一見すると深いお皿に盛り付けてあるように思いますが、底は浅く、量はかなり少ないスープパエリア(リゾットというよりは、お茶漬け的な舌触り)です。きのこの風味が充分生かされていて、アイオリソースが添えられています。 デザートの『ぶどう・ライチ・グレープフルーツ』は複雑な構成になっていて、ぶどうのソルベとゼリー、ライチ、グレープフルーツのムースというよりはメレンゲのようなものが重なっています。どれもフルーツの風味を生かしたフレッシュな味わいで、甘さは控えめで、さっぱりした口当たりです。 デザートの『色々チョコレートとバナナ』は、チョコレートとバナナという相性の良い組み合わせで、アイスクリーム、ムースなどいろいろなチョコレートを組み合わせていました。チョコレートはカカオたっぷりで、ビター、クリーミーなどいろいろな味を楽しめます。 食後の飲み物はコーヒー各種、紅茶などの用意があり、プティフールとして『アーモンド3』が出されました。アーモンドは和三盆を使ったもの、円錐状のクッキー、ビター味チョコレートのものが用意され、三種類の変化を楽しめます。コーヒーはカップを温めてあり、苦味、酸味のバランスが良いものでした。 ワインの品揃えは次の通りです。スペイン産の赤、白(主な価格帯 ¥6,000〜¥15,000)とボルドーの赤(¥8,000〜¥20,000)を主に揃えていました。スパークリングワインはカヴァとシャンパーニュの用意があります。シャンパーニュの価格から判断すると、レストランとしては少し割高な価格設定のように思いました。 ◆その他の情報 総料理長は、日比谷にピンチョスのレストラン「ピンチョス・ベポ」も開いているホセ・バラオナ・ビニェス氏です。 とても人気のあるレストランで、週末はウエディングに使われることが多いので、週末は予約を取るのが難しいレストランです。 敷地内に駐車スペースがあり、車で行くことも可能です。 小笠原伯爵邸は、箱根のアルベルゴ・バンブーなどのレストランを経営している、インターナショナル青和(株)が経営しています。 ダイニングルーム内で写真撮影しようとすると、サービススタッフに断られましたが、他のお客様に迷惑にならないように、本サイトの写真はストロボなしで撮影しています。(他にも撮影している人がいましたが) 小笠原伯爵邸のページへ |