またまた公私ともに忙しく、あまりレストランにも行けず、どのコーナーも更新が滞りがちに... このコーナーもまた相当のご無沙汰になってしまいました。 でももう11月ですよ。11月!! 11月と12月は私の最も好きな季節!! 東京を歩き回るには、4月・5月の新緑の季節もいいですが、何と言っても枯葉舞い落ちるムードたっぷりな11・12月の東京散歩は最高!!おまけにクリスマスのライトアップという素敵なプレゼント付きです。レストランにも秋の美味しい食材が続々と...またまた太りそう... さてさて、そんな街のきらめきが魅力的な11月の東京散歩に相応しい(?)今回のお題は、 ニの巻があるかどうか怪しいですが... なぜ『名建築』と言わないで、『名建造物』というのか?『名建築』なんてのたまうと、『丹下 健三氏設計の有名な何とかビルとか美術館』について論じなければならなくなりそうですからね。東京23区内の建物の総数と比較すれば、有名建築家の名建築の数は微々たるものでしょう。 この東京という大都会の風景を形づくっているのは、巷の一般の建築家が設計した名(迷?)建造物の群れなのです。こうした一般建造物も目をこらして良く見ると、なかなか面白い物件があり、街歩きの魅力が増してくるのですよ... 1.地上に舞い降りた豚 ウワッ!!これは何だ!? な、何でこんなところに豚が? 夜中に内幸町の現代的なオフィスビルが立ち並んだ歩道を歩いていて、突然目の前にこの豚が現れたら、誰しも驚きますよね。しかも豚だけでなく、獅子、般若などの一群も並んでいるのです。公開空地の噴水にこれらの獣面彫刻があるだけではなく、真新しいビルの1Fの外壁にも。 なぜ現代のオフィスビルに豚の頭の石像が必要なのか?コツコツ働くサラリーマンを馬鹿にしてるのか?しかも映画 ベイブのように可愛い声で、「Excuse me.」と話しかけてくる礼儀正しい豚ではない。目を剥き出し、頬を膨らませ、仕事で疲れきったサラリーマンを威嚇する豚だ。 昭和初期に建てられたオフィスビルを壊して新築された、日比谷ダイビルのこの印象的な獣面彫刻群。なかなかやってくれます。どーしてこんな挑発的な獣面彫刻を飾ったのか!?その理由も根拠も経緯も全然わからない... 実はこれらの獣面彫刻は、茶色のスクラッチタイルの外壁が印象的だった、取り壊し前の大阪ビルの外壁の最上階付近に並んでいたものなのです。多分ヨーロッパの古い聖堂のファサードなどによくある魔よけを参考に、渡辺節建築事務所のデザイナー(当時の大阪の大手建築設計事務所で、チーフデザインナーだった、かの村野 藤吾氏が設計したと言われています。)が、無機質で画一的なデザインが多いオフィスビルに、こんな遊び心のある獣面彫刻をいくつも取りつけてくれたんです。 以前はビルの上にありましたから、気がつかない人も多かったと思いますけど、新しいビルでは下界に降りてきました。しかも取り壊した後に建てられたモダンデザインのビルの1Fの外壁や公開空き地の目立つ場所に。新しいデザイナーもなかなか粋なことをしてくれます。旧建物の外壁を残して、その奥に新しいビルを造るような、保存再生方法を取ることはできませんでしたが、旧建物の最も印象的な獣面彫刻を残そうとの、せめてもの配慮でしょう。 せっかく大東京を散策するのでしたら、こうした隠れ石像彫刻巡り(神社・仏閣にもたくさんあります。)をして歩くと、散策も信心深く意義深い(?)ものになるかもしれません。 但し間違ってもこのビルの豚にお賽銭あげないでください!! 何のご利益もないはず。 2.ランドマーク建築家 都内を散策していると、すごく目立つランドマークとなるような建物がいくつもあります。飯倉の黒くて茶筒(?)か墓石のような ノアビル、マンハッタンのクライスラービルを彷彿とさせない NTTドコモ代々木ビル、ローマの遺跡を思い出させる(?)京成電鉄 旧博物館動物園前駅舎(こんな小さな建物を知っている人は、ほとんどいないでしょうけど)などなど... 何で丹下 健三氏設計の新宿 都庁、村野 藤吾氏設計の丸ノ内 日本興業銀行本店、槇 文彦氏設計の代官山 ヒルサイドテラスを挙げないのかって?そんな有名な建物なんて、今さらこのコーナーに書く必要はないですよね。 ところが東京人なら誰でも知っているランドマークと呼べる建物をいくつも設計したのに、一般的には有名ではないデザイナーがいます。しかもどの建物もデザインがあまりに異なり、同一人物が設計したとは夢にも思えません。安藤 忠雄氏の設計した建物なら、ほとんどの建物がコンクリート打ち放しで仕上げ、開口部を大きく取っていて、青山の裏道などを歩いていると、「また安藤かあ!」と叫びたくなるほど、似たような建物に出くわします。 東京の代表的な繁華街、銀座にもランドマークと呼べる建物がいくつかあります。銀座4丁目交差点の和光、数寄屋橋交差点のソニービル、厳密には有楽町になりますが、有楽町マリオンのどれかを思い浮かべる人が多いと思います。その中でも銀座のシンボルと言えば、やはり銀座の老舗、和光の建物でしょう。 この銀座の和光の他に、皇居お堀端の第一生命相互館(その裏手のイオニア式オーダーが格調高い、農林中央金庫の建物も同じデザイナーの設計)、上野公園の東京国立博物館、横浜山下公園通りのホテルニューグランド旧館、品川御殿山の原美術館はすべて同じデザイナー、渡辺 仁氏の設計になるもので、どれも戦前(第二次世界大戦のことですよ。)に建てられた有名な建物です。 ちなみに渡辺 仁氏は、昭和40年代まで長生きしましたが、戦後はほとんど有名な建物は設計していないという不可解なデザイナーでもあります。 またかって銀座のランドマークであった旧日劇の建物(取り壊して有楽町マリオンになりました。)もデザインしています。繁華街の目立つ建物ばかりなのに、どれも空襲で全壊という被害にあっていないのは、不思議と言えば不思議です。第一生命相互館とホテル・ニューグランド旧館には、占領軍総司令官マッカーサーが一時期占有という因縁もあります。
悪く言えば、アイデンティティがないとも言えますが...(^_^;; まあ建築物なんてクライアント(パトロン)があってこその世界ですから、その意向(威光?)には逆らえません。クライアントが「私はバロック様式が好きだから、今度六本木に建てる高層オフィスビルはバロック様式でデザインして欲しい。」と言われれば、従わざるをえないのかもしれません。フェイクの街ラスベガスなら、今度は紫禁城そっくりのホテルを建設してもらいたいものです。 東京のどこかに、「東京は世界の中心である。帝都、東京の広場に大聖堂がないのはおかしい。ヨーロッパの大都市にあるような、ゴシック様式の大聖堂を建設しよう!」と宣言する奇特な御人がいると面白いんですけどね。 どうも日本の場合は、金ピカの大本堂を郊外に建てる新興宗教の教祖様(どうやって莫大な建設資金を集められるんですかね?すごい集金能力です。)は多いですが、大都市好きの敬虔で大金持ちのクリスチャンはいないようです。 まあ写真のようなファサードで遊ぶのがせいぜいでしょう。 このビルを建てたのは浪花の人ですかね? 『かに道楽』と同じセンスですね。 【2004年追記】 この名(?)建築、ドン・キホーテに買収され、新たに隣接地に建設したビルと一体化してドン・キホーテ六本木店となりました。もうこの美しい(?)ファサードは見られないのですよ。(-_-) ビルやマンション建設ラッシュのバブル時代と長い不況時代の、変化に富んだ月日を歩んできた帝都東京に、どんな名(迷?)建造物が今後登場するのでしょうか? 東京の街歩きを楽しいものにするために、賢明なるデザイナーの皆さん!!素晴らしい名(迷?)建造物を設計してください。m(_ _)m |